産業廃棄物収集運搬業の許可を受ける手順をどこよりもわかりやすく解説!
産業廃棄物収集運搬業を行うには、都道府県ごとに産業廃棄物収集運搬業の許可を受ける必要があります。
例えば、東京都多摩市(荷積み地)から山梨県富士吉田市(荷下ろし地)まで産業廃棄物の収集・運搬を行う場合、東京都と山梨県の2カ所で許可を受ける必要があります。なお、通過する県に関しての許可は不要です。
また、産業廃棄物収集運搬業には、産業廃棄物収集運搬業と特別管理廃棄物収集運搬業の二種類があります。
どちらも条件が細かく、許可を受けるまで2〜3ヶ月程度かかります。
多くの場合、許認可に関わる行政書士に依頼するケースが多いですが、個人事業主自身、法人の場合は自社での申請も可能ではあります。自社で行う場合、専門家に依頼する場合、どちらのケースであっても、申請の手順を把握しておくことは重要ですので、わかりやすく解説します。
1 産業廃棄物運搬収集業とは?
産業廃棄物収集運搬業とは、建設作業など事業活動のプロセスで出てくる廃棄物のうち、処理に注意を要する物質を運搬・荷下ろしする際に必要な許可で、法律で適正な処理が定められたものを(産業廃棄物)を収集し、処分場まで運ぶことを認めてもらうための手続きとなります。
種類に関しては20種類にも及び、汚泥・廃油・金属くず・がれき類など、全体として収集・運搬・処理の過程で適切なプロセスが求められる物質が大半です。(詳しくは後ほど列挙します)
以前は公害などの問題や不法投棄の問題もあり、都道府県の許可の取得、講習会の受講・修了、排出事業者からきちんと委託契約を受け、書面で契約を締結することが義務化されるなど、処理の過程で非常に厳密なプロセスが必要となります。
1-1 産業廃棄物運搬収集業でできること
では、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得すると、どのような事ができるのでしょうか。具体的には、下記のような産業廃棄物の収集・運搬を行うことができます。
種別 | 具体例 |
---|---|
1 燃え殻 | 焼却炉の残灰などの各種焼却かす、活性炭 |
2 汚泥 | 排水処理の汚泥、建設汚泥などの各種泥状物 |
3 廃油 | グリス(潤滑油)、大豆油など、鉱物性動植物性を問わず、すべての廃油 |
4 廃酸 | すべての酸性廃液 |
5 廃アルカリ | すべてのアルカリ性廃液 |
6 廃プラスチック類 | 発泡スチロールくず、合成繊維くず、合成ゴムくずなど、すべての合成高分子系化合物 |
7 ゴムくず | 天然ゴムくず |
8 不要金属 | 金属くず 鉄くず、アルミくず、金属の研磨くず、切削くずなど |
9 ガラス・コンクリート・陶磁器くず | 板ガラス、耐火レンガくず、タイル、石膏ボード、コンクリート製品製造工程からのコンクリートくず |
10 鉱さい | 鋳物砂、サンドブラストの廃砂、不良石炭、各種溶鉱炉かすなど |
11 がれき類 | 工作物の新築、改築、除去に伴って生じたコンクリートの破片、レンガの破片など |
12 ばいじん | 大気汚染防止法のばい煙発生施設や産業廃棄物焼却施設の集じん施設によって集められたばいじんなど |
(ここからは業種を限定) | |
13 紙くず | 建設業(工作物の新築、改築、除去により生じたもの)、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業の紙くず |
14 木くず | 建設業(工作物の新築、改築、除去により生じたもの)、木材又は木製品製造業(家具製品製造業)、パルプ製造業、輸入木材卸売業、物品賃貸業の木くず、貨物の流通のために使用したパレット |
15 繊維くず | 建設業(工作物の新築、改築、除去により生じたもの)、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業の天然繊維くず |
16 動物系固形不要物 | と畜場で解体等した獣畜や、食鳥処理場で処理した食鳥に係る固形状の不要物 |
17 動植物性残さ | 食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業で原料として使用した動物や植物に係る固形状の不要物 |
18 動物のふん尿 | 畜産農業から排出される牛、馬、めん羊、にわとりなどのふん尿 |
19 動物の死体 | 畜産農業から排出される牛、馬、めん羊、にわとりなどの死体 |
20 その他 | 汚泥のコンクリート固型化物など、(1)~(19)の産業廃棄物を処分するために処理したもので、(1)~(19)に該当しないもの |
このように、産業廃棄物として処理されなければならない物質は相当存在します。さらに特別管理廃棄物という廃棄物の中で爆発性、毒性、感染性その他人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質も存在します。
具体例を挙げると、廃油、廃酸、廃アルカリ、感染性産業廃棄物、廃水銀等に加え、特定有害産業廃棄物として、廃PCB等、PCB汚染物、PCB処理物、指定下水汚泥、鉱さい、廃石綿等、ばいじん又は燃え殻、廃油、汚泥、廃酸又は廃アルカリが特別管理廃棄物に指定されています。
特に石綿(アスベスト)が過去・現在において大きな健康被害を生じさせていることは、ご存じの方も多いでしょう。
産業廃棄物・特別管理廃棄物に該当するどの物質も、適正な処理・運搬・廃棄のプロセスが行われないと、環境に対し、土壌汚染・悪臭・その他健康被害など悪影響を及ぼしかねません。
また、上記の排出物の処理に関して責任を持つのは、排出事業者自身となります。言い換えると、「委託業者に全て任せていたので、責任は取れません」という回避はできません。っそのため、廃棄物処理を事業者に委託する側も、「この事業者に依頼をして、適正に処理をしてくれるだろうか」ということに、強く注意を払っています。
1-2 なぜ産業廃棄物運搬収集業の許可が必要?
先ほども述べたアスベストによる肺への被害、過去には水俣病を始めとする四大公害新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくなどの事例などもあり、その後も不法投棄による土壌汚染などのトラブルが多く発生しました。
このような公害を防止するために、収集運搬事業者に許可申請や講習会の受講を義務づけると共に、排出事業者を責任主体とすることにより、排出事業者・収集運搬事業者双方が適正な処理を行うよう求めているのです。
なお本来は、産業廃棄物を排出した事業者にて、排出した産業廃棄物を自らの責任で処理する義務があります。しかし、全ての事業者が自社で処理することが難しいケースもありますので、自ら処理できない場合は、産業廃棄物処理業の許可を持っている処理業者に処理を委託することができるという建て付けになっています。
また、産業廃棄物の収集・運搬のプロセスにおいては、各廃棄物の特性に応じた、適切なプロセスで処理を行う必要があります。加えて、産業廃棄物収集運搬業許可に関しては「事業の用に供する施設および申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして、環境省令で定める基準に適合するものである」ことを求めています。
許可申請においての審査事項としては、
- ・適切な処理施設・機材を保有しているのか?
- ・事業者に産業廃棄物収集運搬業に関する知識や技術はあるのか?
- ・経営基盤はしっかりしていて、業務途中で経営に支障が出て、廃棄物の処理で問題が生じないか?
- ・経営者・役員などに不適正な人物はいないか?
という点が重要視されます。
1-3 産業廃棄物運搬収集業の罰則
産業廃棄物収集運搬業に関しては、無許可他様々な不正に対して、厳しい罰則が定められています。
公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターのサイトに、罰則が列挙されていますので、重い順に並べてみましょう。
5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科 | 無許可営業・営業許可の不正取得・事業範囲の無許可変更・事業範囲の変更許可の不正取得・事業停止命令違反・措置命令違反・委託基準違反・名義貸しの禁止違反・処理施設無許可設置・処理施設設置許可の不正取得・処理施設の無許可変更・処理施設の変更許可の不正取得・無確認輸出・処理業の受託禁止違反・廃棄物の投棄禁止違反・廃棄物の焼却禁止違反・指定有害廃棄物の保管・処理禁止違反・無確認輸出、廃棄物の投棄禁止違反、廃棄物の焼却禁止違反の未遂行為を行った場合 |
---|---|
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこの併科 | 委託基準違反、再委託禁止違反・施設改善命令・使用停止命令違反・施設無許可譲受け・無許可借受け・無許可輸入・輸入許可条件違反・不法投棄・不法焼却目的の収集運搬 |
2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこの併科 | 無確認輸出目的の予備 |
1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金 | 管理票交付義務違反、記載義務違反、虚偽記載・運搬業者管理票写し送付義務違反、記載義務違反、虚偽記載・管理票回付義務違反・処分業者管理票写し送付義務違反、記載義務違反、虚偽記載・管理票写し保存義務違反・虚偽管理票交付・管理票未交付による産業廃棄物の引渡し・虚偽管理票写し送付または報告・電子管理票虚偽登録・電子管理票報告義務違反、虚偽報告・勧告命令違反 |
1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金 | 情報処理センターに係る秘密保持義務違反・土地形質変更命令違反 |
6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 | 欠格要件該当届出義務違反、事業場外保管届出義務違反・施設使用前検査受検義務違反・施設計画変更等命令違反・処理困難通知義務違反、虚偽通知・処理困難通知写し保存義務違反・土地形質変更届出義務違反、虚偽届出・事故時応急措置命令違反 |
30万円以下の罰金 | 帳簿備付け・記載・保存義務違反、虚偽記載・業廃止・変更届出、施設廃止・変更、相続届出義務違反・定期施設検査拒否、妨害、忌避・施設の維持管理事項記録・備付け義務違反、虚偽記録・処理責任者・管理責任者設置義務違反・有害使用済機器の保管または処分の届け出義務違反・虚偽報告・報告拒否、虚偽報告・立入検査・収去拒否、妨害、忌避・技術管理者設置義務違反 |
両罰規定(個人も法人も、両方処罰しますよ、という規定で、法人に向けた罰則) |
3億円以下の罰金 無許可営業(廃棄物処理法第1号) 営業許可の不正取得(第2号) 事業範囲の無許可変更(第3号) 事業範囲の変更許可の不正取得(第4号) 無確認輸出(第12号) 廃棄物の投棄禁止違反(第14号) 廃棄物の焼却禁止違反(第15号) (他のケースもあり) |
ここでは、廃棄物処理法に違反する処理を行った代表者、代理人、使用人その他の従業員自身が個人として懲役・罰金(両方の場合もあり)を受けるだけでなく、「両罰規定」といい、法人も併せて処罰、しかも最大3億円の罰金を課される可能性があると言うことです。
このように、廃棄物処理法の個人に対する量刑は重いです。加えて、法人に対しても罰金が課せられるという両罰規定があるため、産業廃棄物収集運搬業に関しても、廃棄物処理法を遵守することが求められます。
1-4 産業廃棄物運搬収集業が取り消される場合
都道府県それぞれが、「産業廃棄物処理に係る行政処分要綱」を定めています。単純に言うと、許可の基準に適合しなくなった許可業者や、違反行為や不適正処理を行った事業者らに対して許可の取消し、もしくは事業停止命令、改善命令などを行っています。
許可が取り消される際や事業停止命令・改善命令の際は、社名・代表者氏名・住所・許可の種類・処分内容が都道府県のホームページなどで公開されます。
実際に許可が取り消されたり、事業停止命令などが下る事例を、都のホームページからピックアップしてみましょう。
許可取り消し | 廃棄物処理法違反(焼却禁止)により、罰金刑が確定 |
---|---|
許可取り消し | 裁判所から破産手続開始の決定を受ける |
許可取り消し | 別の県知事から廃棄物処理法違反(改善命令違反)により、産業廃棄物の収集運搬業及び処分業並びに産業廃棄物処理施設設置の許可の取消処分を受ける |
許可取り消し | 産業廃棄物処理業者の役員のうち1名に、懲役刑(執行猶予付)が確定 |
許可取り消し | 廃棄物処理法違反(再委託禁止違反)により、産業廃棄物収集運搬業の許可の取消処分 |
許可取り消し | 産業廃棄物収集運搬業の許可を取得後、一般家庭にチラシを配布し、不用品回収などと称して、廃棄物処理法第7条第1項の規定に基づく一般廃棄物収集運搬業の許可を受けないで、一般廃棄物の収集運搬を行った |
30日間の事業停止 | 処理を受託した産業廃棄物を、積替え保管の届出を行っていない所在地にて積替え保管を行う。また、受託した産業廃棄物の処分を終了していないにもかかわらず、産業廃棄物管理票に虚偽の記載を行い、排出事業者に送付 |
このように、不適切な処理だけでなく、役員の不祥事や、必要な許可を受けずに事業を行うこと、破産手続などでも許可が取り消しになるため、適正な処理に加え、役員の不祥事でも許可が取り消しになる恐れがあるため、注意が必要です。
2 産業廃棄物収集運搬業の許可を受ける手順
それでは、産業廃棄物収集運搬業の許可を受けるための手続きはどのようになっているのでしょうか。東京都の事例を元に見てみましょう。
産業廃棄物収集運搬業には、
- ・通常の産業廃棄物収集運搬業
- ・特別管理産業廃棄物収集運搬業
の2種類があります。
特別管理産業廃棄物収集運搬業の方が、より注意を要する物質を収集・運搬する関係で、より厳格になっています。
なお、東京都で許可取得を行う場合、2020年6月時点で、産業廃棄物収集運搬業の新規許可申請は81,000円の手数料(更新の場合は積み替え保管を含む場合73,000円、積み替え保管を除く場合は42,000円)、特別管理産業廃棄物収集運搬業の新規許可申請は81,000円の手数料(更新の場合は積み替え保管を含む場合74,000円、積み替え保管を除く場合は43,000円)がそれぞれ必要となります。
2-1 産業廃棄物収集運搬業許可の全体像
申請の流れ | 注意点 |
---|---|
講習会の受講 | 公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの講習会を、申請者本人か代表者、役員、政令使用人が終了する必要がある(感染症等諸事情で講習会が開催されない場合は、講習会が再開されるまで待つ必要がある) |
申請書の作成 | 申請書を決められた順番で綴じる |
申請日時の予約 | 日時を予約する必要があるが、新型コロナウイルスの影響がある際は、郵送対応となる |
申請 | 申請書の形式審査後、都道府県が求める方式で審査手数料を納付 |
審査 | 概ね60日間とされているが、新型コロナウイルスの関係で審査に時間がかかる |
許可証交付 | 審査に通過した場合、窓口もしくは郵送で許可証を受け取る |
なお、特別産業廃棄物収集運搬業も同様の流れとなります。
この中の「講習会の受講」ですが、「公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)の処理業講習会を受講する必要があります。
2020年6月現在は、新型コロナウイルスの影響もあり、暫定的にオンライン講習会が行われています。
講習会受講には、「産収過程」産業廃棄物収集・運搬業の許可を新たに受ける)という区分で、30,500円の受講料、「特収課程」(特別管理産業廃棄物収集・運搬業の許可を新たに受ける)で46,600円の受講料がかかります。
なお、修了試験もあり、講義・試験は全て日本語で行われますので、「修了試験がある」ということはご留意下さい。
2-2 産業廃棄物収集運搬業の提出書類
それでは、産業廃棄物収集運搬業及び特別産業廃棄物収集運搬業の提出書類をリストにしてみましょう。なお、申請書提出の際は、下記に並べた順番で、左側に2穴をあけ、綴じひもで綴じる必要があります。
産業廃棄物収集運搬業(新規の場合)・特別管理産業廃棄物収集運搬業許可申請書
申請書類 | 法人 | 個人 |
---|---|---|
産業廃棄物収集運搬業許可申請書もしくは特別管理産業廃棄物収集運搬業許可申請書 | ○ | ○ |
事業計画の概要 | ○ | ○ |
運搬車両の写真(カラー) | ○ | ○ |
運搬容器等の写真(カラー)・パンフレットの代用は不可 | ○ | ○ |
事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を添付している場合は不要) | ○ | ○ |
資産に関する調書(個人用) | ○ | |
誓約書 | ○ | ○ |
定款の写し | ○ | |
法人の登記事項証明書 | ○ | |
個人事業代表者の住民票抄本(申請者)・本籍記載、マイナンバー未記載であること | ○ | |
役員の住民票抄本(同様)・5%以上の株主又は出資者 | ○ | |
政令使用人の住民票抄本(同様) | ○ | ○ |
役員・代表者それぞれが成年被後見人等に該当しない旨の登記事項証明書等 | ○ | ○ |
政令使用人に関する証明書(当該使用人がいる場合) | ○ | ○ |
申請者の許可証の写し(他に産業廃棄物に係る許可(他道府県市のものを含む)を有する場合は、当該許可証) | ○ | ○ |
設立直後の法人の場合、下記の書類に換えて会社法第 435 条又は第 617 条に規定する貸借対照表(開始貸借対照表) | ○ | |
貸借対照表(直近3年分) | ○ | |
損益計算書(直近3年分) | ○ | |
株主資本等変動計算書(直近3年分) | ○ | |
個別注記表(直近3年分) | ○ | |
法人税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分) | ○ | |
所得税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分) | ○ | |
経理的基礎を有することの説明書(p.28)及び記載者の資格証明書、又は返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類(任意書式・該当者のみ) | ○ | ○ |
講習会修了証の写し | ○ | ○ |
〔車両を使用する場合〕自動車検査証の写し(使用する全車両) | ○ | ○ |
保冷車であることの証明書(感染性産業廃棄物の収集運搬を申請する場合) 特別管理産業廃棄物収集運搬業の場合のみ | ○ | ○ |
〔船舶を使用する場合〕船舶の使用権原を証明する書類(使用する全船舶)①申請者が所有している場合:船舶検査証書②裸傭船契約をしている場合:船舶検査証書及び裸傭船契約書③裸傭船契約に準じた傭船契約をしている場合:船舶検査証書及び以下の3点が明記されている傭船契約書 | ○ | ○ |
委任状(代理申請時) | ○ | ○ |
このように、産業廃棄物収集運搬業と特別管理廃棄物収集運搬業は、提出書類上はほぼ同じで、かつ両方を同時に申請することができます。その場合、重複する書類を省略することが可能です。
また、他県で既に許可を受けている場合は、他県の許可証を提出することにより、書類の省略も可能です。
2-3 欠格条項に注意
申請時に注意が必要なのは、「事業関係者が欠格条項に該当しないか」という点です。申請が受理されても、申請者、申請者の役員等、5%以上の株主等及び政令使用人が1人でも欠格要件に該当すると判明したときは、不許可処分となります。加えて、「申請時点で欠格要件に該当していたこと」が許可後に判明した場合には、許可が取消されます。
事例として、群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課の欠格条件を元に、簡潔にしてリスト化しますが、全国の基準は大体同じです。
欠格条件 | 備考 |
---|---|
心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定めるもの | いわゆる被成年後見人・被保佐人 |
破産手続の開始の決定を受けて復権を得ない者 | 逆に言うと、破産手続が完了し、免責許可が出れば復権したこととなる |
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 | 執行猶予が付いている場合は、執行猶予満了後 |
その他業務で不正があり、5年を経過しない者 | |
その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者 | |
暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 | 反社会的勢力に該当する人物は認められない |
暴力団員等がその事業活動を実質的に支配する者 | 株式の保有だけでなく、何らかの形で実質的に支配しているとみなされると、欠格条項にあたる |
内容に関してはリンク先のものより大幅に簡略化しておりますが、注意すべきは役員や政令使用人の自己破産です。
上記の場合やその他欠格条項に該当した場合、欠格要件該当届出を2週間以内に提出する必要があります。(2週間以内に届け出なかった場合、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることがある)
また、代表者など、中核人物が欠格条項に該当する場合は、許可取り消しとなる可能性が高いですので、代表者・役員・政令使用人等は、特に行動に注意する必要があります。
2-4 産業廃棄物収集運搬業申請は専門家に委任
ここまで、産業廃棄物収集運搬業の許可申請の流れ、必要書類、注意事項などについてお話ししてきました。書類のリストを見ただけで、提出する書類が多いと言うことはお気づきいただけるでしょう。
実際、東京都の申込書類の記載例を見ても、非常に複雑で、特にこれから法人・個人事業で収集運搬業を営もうとする人にとっては、ハードルが大きいのではないでしょうか。また、各種遵守事項・欠格条項に該当していないかを、一般の人が判断するのは大変です。
現場のプロフェッショナルの場合、自身の仕事に関する知識は豊富でも、その内容を役所の申請書ベースに落とし込む事は容易ではありません。
記載する事項の例として、
- ・事業計画の概要
- ・環境保全措置の概要(運搬に際し講ずる措置、積替施設又は保管施設において講ずる措置を含む。)
- ・収集運搬業務の具体的な計画(車両毎の用途、収集運搬業務を行う時間、休業日及び従業員数を含む。)
- ・積替施設又は保管施設の概要
などがありますが、シンプルに言うと、これらは「都道府県庁にこういう事業を行いますよ」という説明文書と言えます。
産業廃棄物に関する業務に精通した行政書士(もしくは、税理士は行政書士の資格も保有できるので、行政書士登録した税理士)に依頼することで、依頼者から聞き取りを行いながら、業務内容を役所向けの説明書面に編集してくれます。
また、「手続きにこのような書類が必要ですから、登記されていないことの証明書はここの大きな法務局で、住民票抄本はこういう点に気を付けて取得して、ご本人・役員さんは欠格条項に該当することがないか、チェックしますね」など、普段役所での申請手続きが不慣れな人であっても、行政書士の指示通りに行っていけば、スムースに必要書類の収集をおこなうことができます。
もちろん、専門家に支払う手数料はかかります。しかし、時間や手間、手続きにかかるエネルギー、申請者ご自身の時給を考えると、専門家に一任したほうがいいでしょう。
また、不許可・取り下げの場合は申請料が戻ってきませんが、専門家の場合、許可がきちんと降りるかを過去の事例に照らし合わせ、許可が降りない申請ははっきりと伝えますので、ミスや欠格条件で不許可・取り下げという事例も高い確率で防止することができます。
なお、当たり前のようで意外と見落とされがちなこととして、法人は定款に定める事業目的の中に、「産廃業」の記載を求める自治体があります。
専門家に会社設立を依頼し、その際に、「産業廃棄物収集運搬業を行うのですよ」と申請をしていれば、「産廃業」「産業廃棄物収集運搬業」など、事業目的に適切な文言を盛り込んでくれます。
しかし、定款に「産廃業」などの文言がないと、自治体によっては、「定款を修正し、法務局で事業目的の追加を行って下さい」など、事前チェックか申請時に却下を受ける可能性もあります。(問題がない自治体もあるようですが、確実性を考えると、定款に産業廃棄物事業に関する内容が書かれている方が安全です)
このような観点も、個人だとなかなか気づきにくいですが、プロフェッショナルはすぐに指摘してくれます。また、自治体により処理方針や傾向が若干異なることも把握していますので、自治体の傾向に応じた書面作りをしてくれます。
ただし、講習会の出席については、申請者本人なり、事業関係者が出席する義務があることには、注意が必要です。
公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)の実施する、「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」を、個人の場合は申請者本人、法人の場合は代表者、役員(監査役及び社外取締役を除く。)又は政令使用人が修了する義務があります。
講習会の日数は2.3日かかり、修了試験があります。ただ、講習会の過程で産業廃棄物収集運搬業の重要事項を把握できることは意義があります。また、意識しないうちに違反行為をしていた、という事がないように、業務の実質責任者が、実際に講習を受講し、産業廃棄物収集運搬業のイロハについて学んでおくことは重要と言えます。
3 まとめ
以上、産業廃棄物収集運搬業・特別管理廃棄物収集運搬業の許可申請について、できるだけかみ砕いて説明を行いました。産業廃棄物収集運搬業等の申請手続きは、建設業許可などの許認可手続きと並び、複雑かつ細かい点が意外とあります。
申請については、一発勝負で、却下・取り下げの場合は手数料の返還もありませんし、そもそも事業を進める前提で動いていたのに、「申請したら許可が下りませんでした」、では、これまでの努力が水の泡になってしまいます。
できれば、産業廃棄物収集運搬業等に精通した専門家に依頼し、外部に依頼できる部分は外部で、講習会の受講は自社で、と切り分けたほうがスムースでしょう。